THE TOOLS Vol3 [A-1公開]
皮革
~1920年代のケープレザーを再現~
アフリカのケープタウンという、地中海気候の温暖な地
域に居た原種に近いシープ(羊)の皮を、ケープスキンと呼んでいます。
1920年代当時は原種に近く、食肉用や搾乳用に育てるなど、羊毛を取る目的ではない革質の丈夫なヘアシープが多く生息していました。
副産物として残った皮には粗いシボのある部分も多く、結果的にしなやかさと荒々しさが共存するシープスキンとして使用されました。
しかしケープスキンは、現代ではウールシープ(羊毛を取るために飼育される、比較的寒い地域に生息する羊)とヘアシープを交配させ、羊毛も採れて食肉にもなるように品種改良したものしか存在しません。このため、ファッション市場で言うケープレザーは、紳士、婦人物のブルゾンなどに使う表面を綺麗に加工したものになっています。
そこで、岡本博はA-1を精査し、当時のケープスキンに最も近い原皮を皮革工場から取り寄せました。当時の鞣しのスペックに基づいた工程をベースに、経験が生み出すアレンジを加え試験工程を繰り返しました。
少しの工程の違いにより、風合いが変わるため、適度な表面の凹凸の表現がうまくいかず、リブ(個体の血管や骨による皺)が出過ぎたりすることがあったものの、数度の試験工程を経て当時のスペックに忠実に、染色の工程までたどり着きました。
THE TOOLS が使用したケープスキンについて
当時の仕様書や文献ではA-1に使用するマテリアルはケープスキン(シープスキン)を採用しているとあります。今回のプロジェクトに採用したケープスキンは、当
時のケープスキンで作られたA-1に現時点で最も近い、非常に再現度の高いものです。
この革は、若干ヘアシープの血が混じったウールシープで、一般市場に流通し
ている均一的な銀面のクロスブレッドとは異なり、革の表情にリブや皺など、
野性味を残しているのが特徴です。
この特徴をより際立たせるため
鞣しはベジタブル
クロームのコンビネーションで、
仕上げはクラシカルなテイストを出すよう水性顔料(セミアニリン)を採用しました。
*皮革の色は、最も褪色していないオリジナルA-1のフロントポケット内側から彩りました。
ヘアシープとウールシープについて
ヘアシープ
毛用種として改良されず、肉用、または乳用として存続している直毛の羊。
赤道15度の範囲の熱帯地方に生息する。
ウールシープよりも、皮がしなやかで丈夫である。ケープレザーはアフリカのケープタウンにちなんで名付けられたヘアシープで、
歴史のある呼称でヘアシープのケープレザーは現在、ほぼ存在しない。
ウールシープ
ウールをとるために飼育されている巻き毛種の羊で、ヘアシープに対し、
全体を長い毛でおおわれるウールシープは南北緯度45度~60度という比較的気温の低い地域で飼
飼育されている毛皮種である。栄養が皮に廻るヘアシープとは逆で、主に毛のほうに廻る。