ゴーストタウンを訪れて
我々がよく知る、俗に言うゴールドラッシュというカリフォルニアで個人が金を採ることができた時代は,実際には1849年から1856年くらいのもので、5~6年程度のあいだで終わった。砂金など、容易く人力の手作業で金を採ることには限界があった。
1850年代後期には企業の参入により、シェラネバダ山脈の山容を削るような大掛かりな作業が始まった。そうして発足したものがマイニングカンパニーである。
マイニングカンパニーの設立により、アイアンワークス(鉄工所)の機材が次々に導入され、より効率的に岩を砕き、地下深く眠る金を抽出することが可能になった。カリフォルニアに限らず、多くの金が採れる地域には、BOOMTOWNと呼ばれマイニングカンパニーが設置された。マイニングカンパニーのあるそれぞれの地域には新聞が発行され、どの地域で昨日はどれくらいの成果があったか一目で分るような情報が掲載された。
成果のあった地域にはそれだけの人が増え、労働者が増え、その家族が増えるとやがて銀行や学校、酒場やドライグッズストアなどが次々と開かれ、ひとつの街が形成された。しかし、目的の金が抽出されなくなると、マイニングカンパニーはその街から離れ、働く場所を失った労働者もその家族も、その街をはなれることを余儀なくされたのである。
引越しの際、当時の人々は必要最小限のものを持って出たようで、いわゆるゴーストタウンとなった街には今も主人の帰りを待つかのように生活観の漂う佇まいが残されている。
ロサンゼルスから車を走らせること8時間、カリフォルニア州と、ネバダ州の辺境にあるゴーストタウンを訪れた。
ゴーストタウンは現在、カリフォルニア州が管理するヒストリカルパークのようになっており、まばらではあるが、古の夢の跡を訪れる観光客の姿もあった。
ゴーストタウンという大きな集落から離れ、さらに奥地を目指すと、
所々に、岩を砕く機械や、異様な雰囲気を放つセメタリー(墓地)、
バンデッドハウス(壊れた家屋)が点々としている。大きな街の周りに、少しづつ集落があったのであろう。一軒のバンデッドハウスを囲むように、いくつものCAVE(洞穴)がある。その地は人が入るのを拒むかのような荒々しい渓谷のような地域で、4WDのピックアップでも走るのが困難なダートロードを抜けるとあった。
その穴は地下深く続いていた。
いたるところに銃痕の残る瓶や缶などがあり、掘り返されたのであろう、地層が違う岩が無数に転がっていた。
勇気を出して、CAVEを入ってみることにした。
我々を導いてくれるエクスプローラーはどんどん先に進む。
大人がかがんでやっと入れるような息苦しい洞窟を抜けると、斜め上に抜ける道。斜め下へつながる道がある。足元には木枠が敷設されている。
砕いた岩を運ぶトロッコを走らせるためのレールである。
斜め上への道は、入ってきた道が崩れてふさがった場合の抜け道で、こういったつくりはいたるところにあるという。
恐る恐る斜め下へ降りると、そこには何年の間そこに眠っていたのか、まるで深海のように暗く、静かな場所に、トロッコが置き去られていた。
このトロッコを見てふと思った。
ワークウエアは幸せなのではないだろうか。
エクスプローラーによって捜索され、発掘される。
そして我々のはかり知らない、想像もつかない魅力的な意匠をまとったワークウエアは再びこの世に生を受けるのである。
深海のような場所からみつかったおびただしい数のワークウエアのボロが、まるで歴史のパズルを合わせるかのように、その眠りから覚める。それは男のロマンなどという言葉ではあらわせない。武士の甲冑や鎧のような、生命を守るためのワークウエアである。
BACK IN THE DAYS 、そして現代へ・・・
時代を遡り、先人の想いを後世に語り継ぎたい。
そして新しいジーンズの歴史をつくりたいと考えます。
ゴーストタウンにこのような記述がありました。
PLEASE REMEMBER
Don’t take anything
Leave every rock and rusty can in place for our grandchildren to see.
「何も取らないでください」
「私達の孫が見ることができるように、すべての岩及び、さびている缶をそのままにしておいてください。」